ゴム手袋が湿疹を起こす?
天然ゴムに含まれる「ラテックス」と呼ばれる成分でアレルギーを起こす方がいます。
ゴム手袋をはめた手の皮膚に赤い痒い湿疹が生じ、薬で治療しても何度も繰り返します。
天然ゴム製の手袋の使用歴、皮膚症状などから、ラテックスアレルギーによるアレルギー性の皮膚炎と診断した患者さんは、ステロイド外用剤などで治療し症状を鎮静化させます。
それとともに天然ゴムの使用を避けるよう生活指導を行うことで、その後の湿疹の再発を回避することができます。
果物を食べただけで呼吸困難に?
ラテックスアレルギーの方の一部に、果物などの特定の食材を摂取した際に激しいアレルギー症状を生じる方がいます。
口の中の違和感、唇の腫れ、蕁麻疹などの症状を生じる「口腔アレルギー症候群」と呼ばれる状態です。
きっかけとなる食材は、バナナ、アボカド、キウイフルーツ、クリなどです。これらに含まれる蛋白質の構造(アミノ酸の配列)がラテックスと類似しており、ラテックスアレルギーを有する人がこれらの食材を摂取した場合に、強いアレルギー反応を起こすのです。
これをラテックス-フルーツ症候群(latex-fruit syndrome=LFS)と呼び、ときにアナフィラキシーショックと呼ばれる重篤な状態に至ることがあるので、注意が必要です。
ラテックスアレルギーの検査
ラテックスアレルギーやLFS(ラテックス-フルーツ症候群)に該当するかは、病歴や症状から判断するのですが、厳密にはアレルギー検査が必要です。
皮膚テスト(プリックテスト、スクラッチテスト)
アレルギーの原因と疑われる物質から抽出した液を小さな針で皮膚の中に刺し入れて、アレルギー反応が生じるか確かめる検査方法です。
非常に有用な検査方法とされますが、体内に注入されたアレルゲンによってアナフィラキシーショックを起こすリスクがあります。
重篤な反応が生じた場合の対応ができる医療機関でないと実施しにくい検査です。
開業医レベルで行うのは容易ではなく、当院では採用していません。
特異的IgE抗体検査
アレルギー反応を起こす免疫抗体の値を測定する検査です。
院内で採血し、検査会社さんに委託して測定してもらいます。
数日で結果が得られ、患者さんの負担やリスクの少ない検査法です。
上記の皮膚テストと併せて行わないと確実な判定とはなりませんが、治療や生活指導上参考になる指標です。
当院ではLFSに関連するすべてのアレルゲンを調べることは出来ませんが、ラテックス、バナナ、アボカド、トマト、キウイなどが測定可能です。
また、アレルギーを起こしやすい39種のアレルゲンを一度に検査できる「ビュー39」というアレルギー検査にもLFSに関連する項目(ラテックスほか)が含まれています。
アレルギーの関与が疑われるけれど、具体的な原因が絞り込むのが難しい患者さんは検討してよいでしょう。
治療と生活指導
ステロイド外用剤が治療の主役
ラテックスアレルギーで手指などの湿疹が生じている場合、最初に行うのはステロイド外用剤による治療です。
症状に応じて適切な強さの薬を選択し、正しく塗っていただければほとんどの患者さんの症状は軽快もしくは改善します。
補助的に保湿剤やかゆみ止めの飲み薬を使うこともありますが、ステロイド外用剤でつらい症状を抑えることがキーポイントです。
原因を除去して再発を防ぐ
湿疹がどこに分布しているか、症状の経緯がどうだったか、などから悪化原因が推定できる場合は、検査は必ずしも必要ありません。
ラテックスの含まれた天然ゴム製の手袋を極力使わないようにし、ニトリルなどの合成ゴム製、プラスチック製、ビニール製の手袋を使うように指導します。
コストがかかりますし、天然ゴム製に比べて使用感が劣る場合もありますが、症状の原因を遠ざけることができれば再発を防ぐことができます。
また日常の生活環境には手袋以外でも天然ゴムが含まれた製品が存在します。
玩具、スポーツ用品、輪ゴム、伸縮性のあるヘアバンド、下着など、さまざまな日用品にゴムは使われていますので注意が必要です。
ラテックス-フルーツ症候群に注意
LFS(ラテックス-フルーツ症候群)の可能性がある場合は、関連する食材の摂取を極力避けるよう注意を促します。
アナフィラキシーなど激しい症状がおこる患者さんについてはアレルギー検査を検討し、必要に応じて地域の基幹病院にも相談、紹介を行います。
まとめ
なかなか治らない湿疹、何度も繰り返す湿疹の背後に意外な原因が隠れていることがあります。病気の原因に注目することが問題解決の糸口になることもあります。