ニキビの治療
ニキビとは
皮膚科学的には「ざ瘡」と呼ばれています。
皮脂の分泌が多い顔などの毛穴に細菌が増殖し、ぽつぽつした赤い発疹が増加した状態です。
思春期に多く、成人すると症状は軽くなるとされてきましたが、近年では女性を中心に20代以降でもニキビで悩む方が増えています。
ニキビの原因
脂腺性毛包(皮脂腺が発達した毛根)の出口近くが角化して毛穴の通りが悪くなり、さらに皮脂の分泌が増えることで毛包の中に皮脂が充満して盛り上がってきます。
この状態を面皰(めんぽう)と呼んでいます。
いわば初期のニキビであり、肌色の小さなポツポツが盛り上がった状態です。
毛包内にはニキビ菌(アクネ桿菌)がもともと住み着いているのですが、この菌が毛穴に充満した皮脂を餌に増殖して炎症を起こすと、赤いニキビに移行していくと考えられています。
これらは思春期以降のホルモンの変化がきっかけにはじまるとされ、10歳を過ぎたころから面皰が出始め、やがて赤いニキビが増えて17~18歳にピークを迎え、20歳を過ぎると下火になっていきます。
こうした従来から知られる思春期のニキビの他に、近年20代以降に悪化する「大人ニキビ」「思春期後ニキビ」が増えています。
これらは、化粧、不規則な生活、食生活、ストレス、生理不順などが影響すると考えられます。
女性のライフスタイルの変化がこうした「大人ニキビ」が増えている背景にあるのではと言われています。
ここでは思春期ニキビについて解説していきます。
当院の治療方針
- 治療目的、治療戦略を患者さんと共有します
- ガイドラインにのっとったスタンダードな治療を行います
- 生活指導を通じて症状をコントロールします
治療目的、治療戦略を患者さんと共有します
上記で説明したようなニキビができるメカニズムを理解していただきます。
思春期ニキビは20歳を過ぎると徐々に下火になり、長期的には解決しますが、短期の治療で完治するものではありません。
有効な治療法が確立しつつありますが、あくまで症状をコントロールするための治療ですので、治療と生活習慣の改善を通じてニキビを上手に抑えつづけ、ニキビが出やすい思春期をうまく過ごしきることを目指します。
またニキビが極端に重症化すると、つぶれたニキビが瘢痕(きずあと)となって一生消えない形で残ることがあります。重症化して瘢痕が残ることを避けることも重要な目標です。
ガイドラインにのっとったスタンダードな治療を行います
多くの皮膚科医の治療の実績データを集め、学術的、客観的に評価し、有効で安全性の高い治療をランク付けしたガイドラインが日本皮膚科学会から出されています。(尋常性ざ瘡治療ガイドライン2008年)
これは、個々の医師の「勘」や「経験則」ではなく、多くの医師の経験や知恵を集め、より効果的でより安全な治療を普及させようというものです。
当院ではこのガイドラインで高く評価されている
- アダパレン(外用剤)
- 外用抗菌剤
- 内服抗菌剤
の3つを治療の柱にしています。
当院での治療法
アダパレン(ディフェリン)について
非常に有効性の高い塗り薬です。
毛穴の過剰な角化を改善することで、初期のニキビ(面皰)が出来るのを抑制する作用があります。赤く盛り上がったニキビにも有効です。
治療法を単体で比較した場合、多くのニキビ患者さんにとってアダパレンが最も効果が期待できる治療薬です。
ただし、
- 効果が出るまで3ヶ月程度かかることがある
- 使用開始2週間程度は刺激症状が強く出る
- 12歳未満の患者さんに関しては安全性が確立していない(禁忌ではありません。ただし、当院では12歳未満には処方していません)
といった問題点があります。
それらを差し引いても、他の治療法に比べて圧倒的に有効性が高いので、当院においては多くのニキビ患者さんにアダパレンを強く推奨しています。
外用抗菌剤について
ナジフロキサシン(アクアチムクリーム)、クリンダマイシン(ダラシンTゲル)といったニキビ菌に対して抗菌作用を持つ塗り薬を使用します。
アダパレンより効果は劣るものの、有効であり、刺激が少ないという特長があります。
12歳未満の患者さんには最もお勧めの治療薬です。
内服抗菌剤について
ロキシスロマイシン(ルリッド)などの抗菌剤(抗生物質)がニキビに有効です。
ニキビ菌に対する抗菌作用のみならず、ニキビの赤みを徐々に抑えていく「抗炎症作用」があり、古いニキビ跡の赤みにも改善が期待できます。同様の効果はミノサイクリン(抗生物質)にもあります。
併用治療について
これら三者の併用治療が有効性が高いとされ、ガイドラインでも推奨されています。
当院においては、症状、患者さんの希望や生活スタイルなどを勘案し、適切な治療法を選択、場合によっては併用し、ニキビ治療に取り組んでいます。
生活指導を通じて症状をコントロールします
適切な洗顔はニキビのコントロールのために重要です。毎日朝晩、上手に泡洗顔しましょう。
乾燥を避け、化粧水や保湿剤で適度に保湿しましょう。
化粧をする場合は、薄化粧を心がけ、油分ではなく水分主体の化粧品を使いましょう。
薄化粧に抵抗がある場合は、アイラインやリップをやや濃く強調するポイントメイク(その他は薄化粧)をお勧めします。
ニキビを無理につぶしたり、必要以上に触ったりしないようにしましょう。
思春期のニキビの場合、おでこ(ひたい)に多く出ることがありますが、これを隠そうと前髪をおろすとかえってニキビが増えやすくなりますので、極力前髪は上げるようにしましょう。(登校中は無理でも自宅にいるときくらいは髪の毛が顔にかからないようにしましょう)
糖分、脂質に偏った食事は避けましょう。
適度に食物繊維などを摂取し、便秘を避けましょう。
適度な睡眠、規則正しい生活、上手なストレスコントロール術を身につけましょう。
Q&A
さまざまな商品があり、中には積極的に広告を行っている商品もあるようです。成分的にはイオウなどある程度有効なものを配合したものもありますが、医師の立場からすると成分内容の割に高価だなと感じることがあります。健康保険でアダパレン(ディフェリン)という非常に有効な治療手段が確立しているのですから、まずは保険治療を第一に考えてはいかがでしょうか。ちなみにイオウ配合のイオウカンフルローションというニキビ治療薬(保険適応)もあり、当院でも処方可能です。
ビタミン剤は補助的治療として使われることがありますが、はっきりとした有効性は確認されていません。院長の治療経験では、劇的に効いた方はいままで一人もなく、一部の方にやや有効という程度でした。副作用はほとんどなく、薬価も安いので基本的な治療法で十分な効果がない方にときどき処方します。
不十分なデータながら一部の漢方薬は赤いニキビに有効な場合があるようです。はっきりとした有効性があるとは言いにくいので、一般的な治療法が無効の場合に補完的に処方することがあります。当院では主に十味敗毒湯を処方しています。
ある程度有効性があるようです。皮膚の代謝を整え、過剰な角質を減らすことでニキビを改善する効果があると考えられていますが、アダパレンが使われるようになり以前ほどニキビに対してケミカルピーリングが行われることは少なくなりました。(当院では現在ケミカルピーリングを行っていません)
掻破行動(かくこと)がニキビを慢性化、重症化させます。気にすれば気にするほど、爪や指先で擦ってしまい、ニキビというよりは掻き傷に近い状態になっていきます。慢性化すると色素沈着とよばれるシミを伴ってきます。行動を修正するのは実際には難しいことですが、まずは「掻くこと=ニキビを悪化させる行動」ということをしっかり理解することです。そのうえで何気なくニキビを触った回数を日記などに記録して、徐々に行動を修正していくといいでしょう。